京都市の宿泊需要は延べ3,106万人泊、うち外国人が1,816万人泊で外国人比率58.5%。東京23区の57.6%を上回り、調査対象地域で最も高い。宿泊需要の6割近くが外国人という構造は、円安局面では最強の追い風になる一方、為替・渡航政策・国際情勢のどれか一つの変化が直撃する構造でもある。期待利回り4.5%は大阪と同水準まで圧縮が進み、商業地は市部で+10.1%と2年連続の2桁上昇。強さと脆さが同じ一つの構造から出ている市場である。
主要指標
需要 — 外国人宿泊の国籍構成
外国人宿泊の国籍構成(金=京都府/グレー=全国)
出典:観光庁 宿泊旅行統計調査(国籍別は従業者数10人以上の施設)
需給 — 月別の客室稼働率
月別の客室稼働率(京都府・2025)
投資 — 期待利回りの都市間比較
主要8都市 ホテル期待利回り(2026年4月・低いほど価格は強気)
データが示す根拠
- 外国人比率の高さ 京都市の延べ宿泊者数3,106万人泊のうち外国人は1,816万人泊(58.5%)。東京23区57.6%・大阪市43.9%を上回り、調査対象で最高。
- 市への一極集中 京都府全体の延べ宿泊者数3,316万人泊のうち、京都市が3,106万人泊と94%を占める。市を除く府域は210万人泊・外国人比率6.2%で、別の市場と言ってよい。
- 国籍構成の分散 外国人宿泊の国籍構成は中国20.1%・米国15.1%・台湾7.2%・豪州5.0%・韓国4.7%。欧米豪の比率が高く、近距離アジア偏重の福岡(韓国36.8%)とは対照的な構成。
- 簡易宿所の高稼働 業態別では簡易宿所52.0%が全国29.6%を22.4pt上回り、突出。町家型・小規模宿泊の稼働の高さが京都の特徴で、シティホテル77.5%・ビジネスホテル77.4%も全国を上回る。
- 地価の2桁上昇 商業地の平均変動率は京都市+10.1%(令和8年)。府全体でも+7.9%と全国+4.3%を大きく上回る。
市場評価
| 評価軸 | 主要データ | 評価 |
|---|---|---|
| 宿泊需給 | 客室稼働率66.8%(府・全国61.6%)/シティ77.5%・ビジネス77.4% | ○ 堅調 |
| 需要の量 | 京都市 延べ3,106万人泊/外国人1,816万人泊(58.5%) | ◎ 国内最高水準の集客 |
| 需要の質 | 外国人58.5%。国籍は分散(中国20.1%・米国15.1%)だが外国人依存そのものが高い | △ 構造的に外需依存 |
| 季節性 | 月別稼働は10月76.8%〜1月52.8%で振れ幅24.0pt | △ 桜・紅葉の二山 |
| 投資利回り | 期待利回り4.5%(第54回・0.1pt低下)。大阪と同水準 | ○ 圧縮が継続 |
| 地価 | 商業地 京都市+10.1%・府+7.9%(全国+4.3%) | ◎ 2桁上昇 |
| 金利環境 | 政策金利1.0%・10年国債2.785%でスプレッドは約1.7pt | △ 要注視 |
| 人口 | 京都府は2020→25で減少(増加は東京都・沖縄県のみ) | △ 国内需要の母数は縮小 |
京都の◎は「需要の量」と「地価」に集中し、△は「外国人依存」「季節性」「金利」「人口」に並ぶ。注意すべきは、◎の源泉と△の源泉が同じだということである。需要の量と地価上昇はインバウンドが作っており、その依存度の高さがそのまま脆さになる。国籍が分散していることは単一国リスクを和らげるが、「外国人が来なくなる局面」全体に対しては効かない。
結論
京都は「量は最強・構成は最脆」という一点に尽きる。外国人58.5%が作る需要と地価上昇は本物であり、期待利回り4.5%への圧縮も市場の合理的な評価である。ただしその評価は外需の継続を前提としており、前提が崩れた場合の調整は稼働率の高い大阪より速く深くなり得る。取得の規律は、利回りの水準ではなく、外需が3割減った場合でも回る収支かどうかで判定すべきである。
調査の方針
- 掲載する数値は、政府統計および第三者機関が公表した資料から直接取得しています。
- 公表資料で確認できなかった項目は「未確認」と明記し、推計では補完していません。
- 国籍別の集計は従業者数10人以上の施設に限られるため、構成比のみを比較に用い、実数は総数側の数値と混ぜていません。
- 結論に不利な材料も併記しています。
出典
- 観光庁「宿泊旅行統計調査」令和7年(2025年)年間確定値(第2表・第8表・参考第1表・広域市町村130区分別集計)
- 日本不動産研究所「第54回不動産投資家調査」(2026年4月現在)
- 国土交通省「令和8年地価公示」
- 日本銀行 金融政策決定会合(2026年6月16日)/日本相互証券(2026年8月7日)
- 総務省「令和7年国勢調査 人口速報集計」