東京23区の宿泊需要は延べ1億373万人泊と全国の約16%を占め、外国人だけで5,979万人泊(57.6%)に達する。客室稼働率76.3%は月次でも最低71.1%(1月)と、閑散期が事実上存在しない。需要の質・量ともに国内最強である一方、期待利回り4.1%はなお低下を続け、10年国債2.785%とのスプレッド約1.3ptは主要都市で最も薄い。市場の強さは価格に完全に織り込まれており、東京で問われるのは市場の選別ではなく、金利シナリオと個別物件の NOI 成長力である。
主要指標
需要 — 外国人宿泊の国籍構成
外国人宿泊の国籍構成(金=東京都/グレー=全国)
出典:観光庁 宿泊旅行統計調査(国籍別は従業者数10人以上の施設)
需給 — 月別の客室稼働率
月別の客室稼働率(東京都・2025)
投資 — 期待利回りの都市間比較
主要8都市 ホテル期待利回り(2026年4月・低いほど価格は強気)
データが示す根拠
- 需要の絶対量 23区の延べ宿泊者数1億373万人泊は、2位の大阪市5,223万人泊の約2倍。外国人5,979万人泊は全国1億7,992万人泊の33%にあたる。
- 閑散期が無い稼働 月別稼働率は最高10月80.6%・最低1月71.1%で振れ幅9.5pt。最低月でも71%を保ち、調査対象で唯一「谷が無い」市場。
- 業態を問わない強さ ビジネスホテル81.5%(全国75.3%)・シティホテル77.2%(同74.1%)・簡易宿所48.6%(同29.6%)。全業態で全国平均を上回る。
- 国籍の分散 外国人宿泊の構成は中国18.0%・米国16.4%・台湾7.4%・韓国7.2%・豪州5.3%。特定国への偏りが最も小さい分散構成。
- 地価の突出 商業地の平均変動率は23区+13.8%(令和8年)で7年間の最大値。全国+4.3%の3倍を超え、上昇は加速している。
市場評価
| 評価軸 | 主要データ | 評価 |
|---|---|---|
| 需要の量 | 23区 延べ1億373万人泊/全国の約16% | ◎ 国内最大・別格 |
| 需要の質 | 外国人57.6%だが国籍分散は最良(最大の中国でも18.0%) | ◎ 量・分散とも最強 |
| 宿泊需給 | 稼働76.3%・最低月でも71.1%(振れ幅9.5pt) | ◎ 閑散期が無い |
| 投資利回り | 4.1%(第54回・0.1pt低下)。スプレッド約1.3ptは最薄 | △ 織り込み済み |
| 金利感応度 | 10年国債2.785%。スプレッドの薄さは金利上昇の直撃を意味する | △ 主要都市で最も高い |
| 地価 | 商業地 23区+13.8%(全国+4.3%) | ◎ 突出・加速 |
| 人口 | 東京都は2020→25で人口増加(全国で2都県のみ) | ◎ 母数が縮まない |
| 制度 | 宿泊税は改定の動きがあるが条例本文の詳細は本版では未確認 | △ 確認中 |
評価軸の◎は5つと調査対象で最多だが、投資判断はむしろ単純ではない。◎が並ぶ市場は誰にとっても◎であり、その総意が利回り4.1%・スプレッド1.3ptという価格に既に変換されているからである。東京の問いは「良い市場か」ではなく「この価格でもリターンが残るか」であり、答えは金利の行方と個別物件のNOI成長力にしか無い。
結論
東京は市場としては文句の付けようがない。需要は国内最大で分散し、稼働に閑散期が無く、人口も増える。だからこそ、投資判断の重心は市場分析から価格分析へ完全に移る。スプレッド約1.3ptの下では、取得の成否は金利シナリオと個別物件のNOI成長力で決まり、市場平均を買う発想は成立しない。東京で規律を保つとは、良い市場の中で「買わない物件」を正しく増やすことである。
調査の方針
- 掲載する数値は、政府統計および第三者機関が公表した資料から直接取得しています。
- 公表資料で確認できなかった項目は「未確認」と明記し、推計では補完していません。
- 広域市町村区分「東京都23区内」を市場の中心として用い、都全体と区別しています。
- 国籍別の集計は従業者数10人以上の施設に限られるため、構成比のみを比較に用いています。
- 結論に不利な材料も併記しています。
出典
- 観光庁「宿泊旅行統計調査」令和7年(2025年)年間確定値(第2表・第8表・参考第1表・広域市町村130区分別集計)
- 日本不動産研究所「第54回不動産投資家調査」(2026年4月現在)
- 国土交通省「令和8年地価公示」
- 日本銀行 金融政策決定会合(2026年6月16日)/日本相互証券(2026年8月7日)
- 総務省「令和7年国勢調査 人口速報集計」