那覇を含む沖縄県南部の宿泊需要は延べ1,251万人泊、外国人比率24.4%。期待利回り5.0%は主要8都市で札幌と並ぶ高水準で、10年国債2.785%に対するスプレッド約2.2ptは主要都市で最も厚い。沖縄県は2020→25年で人口が増加した全国2都県の一つであり、国内需要の母数が縮まない数少ない市場である。一方、外国人宿泊の最大市場は台湾(県全体の32.4%)で、構成は本土のどの都市とも異なる。シティホテル稼働68.2%が全国平均を下回る点は、供給消化の途上であることを示す。
主要指標
需要 — 外国人宿泊の国籍構成
外国人宿泊の国籍構成(金=沖縄県/グレー=全国)
出典:観光庁 宿泊旅行統計調査(国籍別は従業者数10人以上の施設)
需給 — 月別の客室稼働率
月別の客室稼働率(沖縄県・2025)
投資 — 期待利回りの都市間比較
主要8都市 ホテル期待利回り(2026年4月・低いほど価格は強気)
データが示す根拠
- 利回りとスプレッド 期待利回り5.0%は第53回から横ばい。10年国債2.785%とのスプレッド約2.2ptは、東京(約1.3pt)・京都・大阪(約1.7pt)を大きく上回る。
- 人口が増える県都 2020→2025年で人口が増加したのは東京都と沖縄県のみ。国内需要の母数が長期で縮まないことは、地方都市の中で決定的な違いになる。
- 台湾が最大市場 沖縄県の外国人宿泊の国籍構成は台湾32.4%・韓国18.5%・中国11.8%・米国11.7%。台湾比率は全国12.9%の2.5倍で、地理的近接が作る独自の構成。
- 業態間の温度差 リゾートホテル66.6%(全国56.9%)・ビジネスホテル77.2%(同75.3%)は全国超え。一方シティホテル68.2%は全国74.1%を5.9pt下回り、都市型フルサービスは供給消化の途上。
- 地価 商業地の平均変動率は沖縄県+7.3%・那覇市+7.1%(令和8年)。全国+4.3%を上回る上昇が続く。
市場評価
| 評価軸 | 主要データ | 評価 |
|---|---|---|
| 投資利回り | 5.0%・2期横ばい/スプレッド約2.2ptは主要都市最厚 | ◎ 妙味が残る |
| 人口・長期需要 | 沖縄県は2020→25で人口増加(全国で2都県のみ) | ◎ 母数が縮まない |
| 需要の量 | 南部区分 延べ1,251万人泊/外国人305万人泊(24.4%) | ○ 厚い |
| 需要の質 | 台湾32.4%・韓国18.5%。近距離アジアに寄るが3市場に分散 | ○ 分散はある |
| 宿泊需給 | 県総数60.3%は全国61.6%をわずかに下回る/シティ68.2%(全国74.1%) | △ 供給消化の途上 |
| 地価 | 商業地 那覇市+7.1%・県+7.3%(全国+4.3%) | ○ 上昇継続 |
| 金利環境 | 政策金利1.0%・10年国債2.785% | ○ スプレッドに余裕 |
| 制度 | 沖縄県の宿泊税は導入の動きがあるが条例未確認 | △ 未確認 |
那覇の特徴は「利回りに余裕がある唯一の主要都市圏」であること。東京・大阪・京都がスプレッド1.3〜1.7ptまで圧縮されるなか、約2.2ptの厚みと人口増加という長期要因が重なる。ただし稼働率の水準は本土主要都市より低く、特にシティホテルの68.2%は供給が需要を先行して消化中であることを示す。利回りの厚みは、この消化リスクへの対価と読むべきである。
結論
那覇は主要都市で唯一「利回りの妙味」が言葉どおり残る市場である。スプレッド約2.2ptと人口増加県という土台は、圧縮しきった本土都市には無い。ただしその余裕は、シティホテルの供給消化と台風リスクへの対価であり、取得の成否は価格交渉よりも業態・立地の選別と運営設計で決まる。買ってよい市場かではなく、何をどう買うかが問われる市場である。
調査の方針
- 掲載する数値は、政府統計および第三者機関が公表した資料から直接取得しています。
- 公表資料で確認できなかった項目は「未確認」と明記し、推計では補完していません。
- 広域市町村区分「沖縄県南部」は那覇市単独ではなく南城市・糸満市等を含みます。本文ではその旨を明記しています。
- 国籍別の集計は従業者数10人以上の施設に限られるため、構成比のみを比較に用いています。
- 結論に不利な材料も併記しています。
出典
- 観光庁「宿泊旅行統計調査」令和7年(2025年)年間確定値(第2表・第8表・参考第1表・広域市町村130区分別集計)
- 日本不動産研究所「第54回不動産投資家調査」(2026年4月現在)
- 国土交通省「令和8年地価公示」
- 日本銀行 金融政策決定会合(2026年6月16日)/日本相互証券(2026年8月7日)
- 総務省「令和7年国勢調査 人口速報集計」