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2026年8月9日

海外投資家が日本のホテルで最初に確認する6つのこと

海外の投資家から日本のホテルについて相談を受けると、質問の順序が国内の投資家とはっきり違います。価格や利回りの話に入る前に、まず「この取引はどう成立するのか」を確認しにきます。日本側から見ると意外に思える論点もあるので、整理しておきます。

1. どの形で買うことになるのか

最初に来るのがこれです。日本のホテル取引には複数の形があり、どれを選ぶかで手続きも税務も関与する専門家も変わります。

  • 実物不動産(現物) — 土地建物をそのまま取得する
  • 不動産信託受益権 — 信託銀行に信託された不動産の受益権を取得する
  • SPC持分・匿名組合出資持分 — 器となる法人や組合の持分を取得する
  • 株式譲渡(M&A) — ホテルを保有する会社ごと取得する

売主側が「現物で売る」と決めていても、買主の事情でスキームを組み替えたほうが成立する場合があります。売却の初期段階でこの選択肢を潰さずに置いておくことが、結果的に買主の母集団を広げます。

なお当社は宅地建物取引業者であり、金融商品取引業の登録は受けていません。不動産信託受益権の売買の媒介・代理・取次ぎは行わず、裏付けとなる不動産と運営事業の情報を確認・分析するアドバイザーとして関与します。受益権自体の媒介が必要な場合は、第二種金融商品取引業の登録を受けた事業者をご紹介します。

2. 許認可はそのまま引き継げるのか

ホテルを営業するには旅館業法の営業許可が必要です。ここで海外投資家がよく誤解するのが、「建物を買えば許可も付いてくる」という前提です。

許可は営業者に対して与えられるものなので、取引の形によっては新たに取り直しが必要になります。株式譲渡で会社ごと取得すれば営業者が変わらないため許可は継続しますが、現物を買って営業者が替わる場合は手続きが要ります。この違いがスケジュールに直結します。

3. 建築と消防は適合しているか

検査済証があるか、増改築が確認申請どおりか、消防設備が現行基準を満たしているか。中古のホテルではここに論点が残っていることが珍しくありません。

海外の投資家は、取得後にこの是正費用を負担する可能性を強く警戒します。逆に言えば、売主側が事前に状況を整理して開示できていれば、それだけで価格交渉の材料を1つ減らせます。

4. 誰が運営するのか

取得後に誰がホテルを回すのかが決まらないと、買主は収益の前提を置けません。したがって価格も出せません。

現運営者の契約を承継できるのか、承継するとしてフィーの条件は妥当か、承継しないなら代わりの運営者を確保できるのか。海外投資家、特に日本での取得が初めての場合は、この運営の手当てが最大の障壁になります。売主側が「運営付きでも空室渡しでも対応できる」状態を作っておくと、話が前に進みやすくなります。

5. 出口はあるか

入口の価格と同じくらい、出口を気にします。数年後に売るとき、買ってくれる先が国内にどれだけいるのか。J-REITの取得基準に合うのか。規模や立地によっては、出口の細さが取得判断を止めます。

これは売主側から見れば「自分の物件がどの層に売れるアセットなのか」を知る機会でもあります。

6. 何人が関わり、どれくらいかかるのか

日本の不動産取引は関与者が多く、外から見ると流れが読みにくい領域です。宅地建物取引業者、司法書士、税理士、不動産鑑定士、弁護士。それぞれの役割と、いつ関与するのか。この地図を最初に共有するだけで、進行の見通しが立ちます。

税務についても、仲介報酬・登録免許税・不動産取得税・印紙税・消費税・源泉徴収など、検討すべき項目は多岐にわたります。ただし具体的な税額や税率の判断は、投資家ご自身の税務顧問にご確認いただく領域です。私たちの役割は、その検討に必要な材料を揃え、日本側の専門家を手配することにあります。

売主側にとっての意味

ここまで挙げた6点は、すべて「売る側が事前に整理できるもの」です。買主から質問されてから調べ始めると、そのたびに交渉が止まります。逆に、初期の開示資料の段階でこれらに答えが用意されていれば、海外投資家にとって検討しやすい案件になります。

私たちが売却のご相談をお受けするとき、資料整備にそれなりの時間をかけるのはこのためです。

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